病気の原因と症状
わが国は急速な高齢社会を迎えて、やれ介護の問題がどうだこうだと慌てふためいている現状ですが、その過程で、お年寄りの骨粗しょう症がにわかにクローズアップされてきました。
骨粗しょう症とは、骨が軽石のようになり、たくさんの小さな孔が空いたようになってしまう病気です。骨に鬆(す)が入ったように中がスカスカになり、もろくなって、小さな衝撃でも骨折しやすくなります。
屋台骨がおかしくなっているのだから、寝たきり、という人が多くなるのも、うなずけます。
ガンや心臓病、脳卒中のように、直接、生命の危険となる病気ではないのですが、骨粗しょう症による骨折から寝たきりになってしまう人もいるのです。
骨は新陳代謝により、私たちの体の中では、繰り返し古い骨が壊され(骨吸収)、新しい骨がつくられています(骨形成)。しかし、この新陳代謝のバランスがくずれ、骨吸収が進んで骨形成が追いつかなくなると、骨がスカスカの状態になってしまうのです。
骨粗しょう症については、早くから医師や専門家に指摘されてきましたが、いまだに誤解されたままです。なぜなら、いまの栄養学では乳児からお年寄りまで、「カルシウムの補給に牛乳を」と叫ばれているからである。
骨粗しょう症は男性にもみられますが、閉経による女性ホルモンの分泌の低下が骨密度を低下させるため、特に女性に多くなります。このような生理的な体の変化のほか、遺伝的要因や栄養不良、運動不足などの生活習慣も、骨粗しょう症の発症に大きく関係していることがわかっています。
女性の骨密度は18歳くらいでピークに達し、40歳代くらいまではほとんど一定ですが、その後は急速に低下していきます。骨をつくるのに必要なカルシウムは、腸から吸収されて骨に取り込まれますが、年をとると腸管からのカルシウムの吸収が悪くなってしまうのも骨密度が低下してしまう原因のひとつだといわれています。
このように、多くの人は年齢を重ねるとともに、骨密度が減ってしまいます。しかし、バランスのとれた食事や適度な運動を心がけることにより、骨密度の低下を防いだり、低下の速度を遅らせたりすることができるのです。
こちらのページには片足で1分間立つフラミンゴ運動が骨粗鬆症改善に役立つと紹介されています。ウォーキングやスクワット運動より手軽に出来てよさそうです。
日本人のカルシウム吸収率は、欧米人の半分
ところで、「カルシウムを豊富に含む完全栄養食品」の牛乳を飲んだら、日本人の9割は飲用後、腹痛や下痢を本当はおこすはずです。それは日本人の体には乳糖を分解する酵素、ラクターゼが存在しないからで、乳児の母乳吸収に必要なことから存在したラクターゼも、離乳とともに生理的に消失するからです。
そうした日本人が、もし牛乳を飲んで何でもなかった、となれば、それは本物の牛乳ではない証拠であり、事実、市中に出まわっている牛乳のほとんどは高温殺菌処理された加工調整牛乳なので、腹痛や下山刑をおこす人はあまりいないのが現状です。そのため、相変まんえんわらず、せっせせっせと飲まれているわけだが、その結果が、骨租しょう症の蔓延という事実を知る人はまだまだ少ないのが現状です。
「カルシウム・パラドックス」を未然に防ぐための注意点
なお、骨のカルシウムはリンと大変深い関係をもっているので、リンにも関心を向けなければなりません。新生児に10日もたたないうちに牛乳を与えると、低カルシウム血症から、「テタニー」と呼ばれる筋肉ケイレンをひきおこしてしまいます。
その理由は、牛乳にはリンが母乳の約6倍( 100 gあたり90mg)も含まれており、それがカルシウムの吸収を阻害するためです。
そもそも、血液中ではカルシウムイオンと、リン酸イオンを掛け合わせた値(溶解積)がコンスタント係数として一定しています。したがって、リンが多くなって血中のリンイオン濃度が高くなると、それだけ血中のカルシウムイオン濃度が低下し、すると今度は副甲状腺から上皮小体ホルモン(パラソルモン)が分泌されて、骨からカルシウムを動員して血中のイオン濃度を一定に保とうと、カルシウムイオン濃度を高めようとするのです。
この時、赤ちゃんの骨はまだ細くカルシウムをほとんど蓄えていない軟骨なので、リンが多くはいってきた分、モロにその影響を受けて、「低カルシウム血症」をひきおこしてしまうのです。
一方、大人の場合は、幼児のように容易に「低カルシウム血症」はおこさないものの、すでにできあがっている骨からカルシウムやリンが出ていってしまいます。つまり、骨のカルシウムの蓄えがなくなって骨がスカスカになる、あの骨租しょう症をつくりだすのである(体重50 kgの成人には約1 kgのカルシウムが存在し、うち99%が骨の成分、残り1%が血中に存在)。
骨の形成には、運動も不可欠
なお、骨の問題で忘れてならないことは、運動です。宇宙飛行士の体験からも明らかなように、無重力空間では体を支える必要性がないため、骨量の減少(尿排泄)が著しく、小さなカプセルで飛んでいた場合には、地上に帰還した時にすぐに立てないことが多かったのです。ところが、いまではスペースシャトルのような大きい飛行船になっているので、ペダルを踏んで体を鍛える空間も確保され、長期滞在でもかつてのような光景はまったくみられなくなっています。
しかし、重力圏に包まれたこの地球上では、体を十分に支えるしっかりした骨がなければいけません。
骨は一見して硬そうに見えるため、あまり変化していないように感じられるのですが、細胞には骨芽細胞といって、皮膚が日々更新されているように、骨も日々新陳代謝をくりかえしているのです。2~3年で全部入れ替わるともいわれています。
日光にもしっかり当たることが大切
しかも、この骨形成には太陽の光も不可欠で、晴天の日には必ず外出することが重要です。
人の皮下脂肪にはビタミンD の前駆物質エルゴステリンが豊膚に蓄積されています。このエルゴステリンは、日光の紫外線によって構造式の一部に変化をおこし、ビタミンD となります。このビタミンD ができてはじめて、カルシウムの腸管からの吸収が高められるのです。
現在、日本人に必要とされるカルシウム所要量は、成人の場合1日あたり600 mg、妊婦は1000~2000 mgとされるが、最近の見解ではより多いほうが望ましいとされてきています。
骨粗しょう症の食事療法について
骨粗しょう症を予防するには、若い頃からカルシウムをじゅうぶんに摂って、運動を適度におこない、丈夫な骨をつくっておくことです。骨粗しょう症になっても、バランスの取れた食事で、骨密度の低下を遅らせます。
カルシウムをしっかり摂る
丈夫な骨をつくるのに必要なカルシウムは、牛乳や乳製品、小魚、海藻、緑黄色野菜などに多く含まれています。これらの食品の中でも、特に吸収が良いといわれているのが牛乳や乳製品に含まれているカルシウムです。
牛乳が体質に合わずお腹を下してしまうという人は、チーズ、ヨーグルトといった乳製品から摂取するとよいでしょう。
ビタミンDが豊富な食品を摂る
骨粗しょう症には、カルシウムと一緒にビタミンDを摂取することも大切です。ビタミンDには、カルシウムが腸から吸収されるのを助け、血液中のカルシウムが骨へ沈着する割合を高める働きがあります。
調理のコツ
カルシウムをじゅうぶんに摂れるメニューを考えます。小魚や大豆製品、小松菜、春菊、ニラなどの緑黄色野菜、それから、ひじきやわかめなどの海藻類にもカルシウムが豊富に含まれていますから、こういった食品を普段から摂りましょう。牛乳や乳製品をおやつに利用するのも良いです。
骨粗しょう症の治療のポイント
- まず、原因食を断つこと。牛乳、卵、肉および、それらの加工品のいっさいを避ける。ケーキや和菓子などの白砂糖食品も禁止する。ハマチ、ウナギなどの養殖魚も避ける。
- 玄米を長時間弱火で煮こんだ玄米スープは、母乳不足の代用乳として役立つばかりか、重湯にすれば乳児の離乳食にも、またお年寄りの病後回復食にも最適。次善の策としては豆乳がよい。
- 末精白雑穀ご飯を主食にする。雑穀にはミネラルが多いので、玄米を主体に、ソバ、アワ、キビ、黒豆、アズキ、トウモロコシなどを用いる。胚芽米や胚芽入り白パンなどは、玄米ほど効果がないので頼らないほうがよい。
- 根菜料理をしっかりとる。レンコンの妙め煮、ニンジンの精進揚げなど。また、ニンジン、ゴボウ、ヒジキ、ネギ、ニンニクなどで妙めたおからは、良質タンパクとミネラル補給の面から骨租しょう症予防の最高のおかず。
- 毎食、みそ汁を欠かさずにとる。とくにカルシウムの多いワカメは必需品。
- 薬草茶をお茶代わりに常用する。オオバコ、クコ、ハトムギなどをベースにするとよい。
薬効食品と自然療法
- ダイコン葉
- ダイコンの葉にはビタミンB1や鉄が多く含まれているので、葉つきのものを買う。細かく刻んで塩もみして1~2日冷蔵庫に保存すると、とてもよい漬け物になる。なお、ダイコンとシラス干しの組み合わせも、清涼感が味わえるだけでなく、カルシウム補給にも最適。
- わかめ
- カルシウムが多く、ヨードも豊富なので、内分泌機能を正常化する。
- しいたけ
- 造血に不可欠なビタミンB12の他、造骨に欠かせないビタミンB2も豊富。