病気の原因と症状
肝臓の病気を先に紹介しましたが、さまざまな肝臓病の行き着く先が肝硬変(かんこうへん)です。肝硬変には、大きく分けて代償性肝硬変と非代償性肝硬変があります。
症状については、代償性の場合、慢性肝炎のような全身倦怠感や食欲不振があります。肝臓は一応はたらいていて、栄養素の代謝がおこなわれます。もう一方の非代償性の場合は、肝臓の機能が著しく低下して、クモ状血管腫やむくみ、腹水、脾臓の腫れが起こったり、意識障害や神経症状などが現れます。
原因については、いずれの肝硬変も、80パーセントくらいはウイルスによるものですが、そのうちの3分の2はC型で、残りがB型だといわれています。
肝臓病というとアルコールの飲み過ぎだと考える人が多いと思いますが、実際にアルコールが原因とされているのは、全体の20パーセントくらいだといいます。ですから、飲まない人はお酒を飲まないから大丈夫、ということにはならないのです。
肝硬変の食事療法について
肝硬変では、病気の進行や悪化をいかに防ぐことができるかが治療の中心となります。非代償性の肝硬変であれば代償期の状態まで立ち直るように、また、代償性の肝硬変であればその状態をできるだけ保つようにします。目標は普通に生活が送れるようにすることで、もちろん食事療法も必要です。その内容は、次のようになります。
代償性肝硬変の場合
- しっかり食べる
- 油は普通に摂ってよい
- 質の良いタンパク質を摂る
一般に食欲が低下しますが、しっかり食べてエネルギー不足を防ぎます。不足するとタンパク質が利用されて、本来のはたらきをしなくなります。
肝硬変では胆汁があまり生成されず油の消化能力は低下しています。しかし、摂り過ぎに気をつけていれば特に制限しなくてもよいです。
昔はタンパク質の量が制限されていましたが、現在では積極的に摂って肝臓の栄養状態を良くする高タンパク食がすすめられています。また、各種ビタミン、ミネラルも肝臓の機能維持のために必要です。
非代償性肝硬変の場合
- 糖質を主にじゅうぶんなエネルギーを補給する
- 油はできるだけ摂らない
- タンパク質を制限する
- 小分けに食べて肝臓への負担を軽くする
脂肪とタンパク質が制限されるので、糖質を主にエネルギーを補給します。デザートや菓子類、砂糖、果糖などを間食に食べたりして、肝臓の栄養状態を良くしましょう。
油をほとんど使わないで調理します。おひたしや煮もの、酢のものなどがよいでしょう。胆汁の生成がとても悪く脂肪の消化能力も低下しているので、脂肪は少なめにしましょう。
代償期とは逆に、できるだけタンパク質を制限します。タンパク質が多くなると、アンモニアが上昇し意識障害が悪化することがあります。
食欲低下で一度に食べられないのをカバーしたり、消化器官の負担を軽くするために、食事は何回にも分けて食べましょう。さらに、やわらかく消化の良いものを選ぶと良いです。
調理のコツ
食欲がなくても食べやすいメニューを考えます。丼もの、寿司、麺類、サンドイッチなど、主食とタンパク質が一緒に摂れるものがおすすめです。むくみや腹水を予防するために、塩分を控え薄味にしましょう。