おいしいものを食べる食習慣のある 美食家は ビタミンB6 不足に注意 しなければいけませんビタミンB6 は、人体でつくることのできない重要な物質ですので、食物から摂取しなければいけません。1930年代に発見された水溶性ビタミンの1つで、人体で約100種類の酵素の補酵素としてはたらいています。
ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸)
- 主成分
- ピリドキシン
- 効能
- 心臓病を防ぐ、血圧を下げる、喘息に効く
- 過剰摂取によって手足のしびれ、知覚異常などの末梢神経障害が起きる
- 注意
- 過剰
- ドーパ、フェニトインの効果を低下させる
細胞をつくる補酵素
- タンパク質の合成を助ける
- 脂質の代謝を促す
- 脳のはたらきを正常に保つ
- 「免疫機能の正常化に役立つ
というのが ビタミンB6 の働きです。
ビタミンB6 は、貯蔵してあるグリコーゲンを切断しブドウ糖をつくるグリコーゲンリン酸化酵素を助けるため、その多くは、筋肉中でこの酵素に寄り添うように存在します。
ヘモグロビンは酸素を人体の隅々の細胞に運搬するタンパク質ですが、このヘモグロビンの活性中心ヘムをつくるにも、 ビタミンB6 は欠かせません。
要するに、 ビタミンB6 が不足すれば赤血球が足りなくなり、貧血におちいるのです。
人体は60兆個もの細胞が集まってできています。その細胞の主成分は、水を除けば、タンパク質が70 %を占めます。このタンパク質をアミノ酸に分解したり、アミノ酸を別のアミノ酸にモデルチェンジしたり、アミノ酸から伝達物質をつくるのに欠かせないのが ビタミンB6 です。
トリプトファン から セロトニン をつくるだけでなく、 ドーパミン 、 ノルアドレナリン 、 ギャバ をつくるにも、ビタミンB6の助けが入り用です。
アミノ酸のモデルチェンジが円滑に行われなければ、アミノ酸を原料としたタンパク質の合成もうまくいかないから、細胞は増殖できなくなります。
細胞が増殖できないなら、赤血球や免疫細胞も不足することになるし、歯や髪だって発育不十分となってしまいます。
しかも、 ビタミンB6 は トリプトファン から ナイアシン がつくられる際にも欠かせない補酵素です。このため、 ビタミンB6 と トリプトファン が十分にあるなら、食物から摂取すべき ナイアシン の量は少なくてもいいです。
1950年代から阻害物質が増加
ビタミンB6 が欠乏すると、 うつ病 、 けいれん 、 貧血 、 イライラ 、 唇や舌の亀裂 、 湿しん疹 などが発生します。 B6 の極端な欠乏例は珍しいのですが、それでも多くの臨床例として、 ビタミンB6 の摂取によって、喘息、月経前症候群、朝の吐き気、腎臓結石などの症状が改善することが報告されています。 ビタミンB6 の不足はあまり知られてませんが、かなり頻繁に起こっていることがわかります。
これらの 病気 が195 0年代から増加の一途をたどっているのは、この時期に食物や薬に含まれる ビタミンB6 の阻害物質が増えたことが一因と考えざるを得ません。
ではどんな物質が B6 の吸収を阻害するのでしょうか。抗結核薬の イソニアジド 、血圧降下薬の ヒドララジン 、ドーパ 、ペニシラミン 、経口避妊薬 、 アルコール などがあります。たんぱく質の代謝に ビタミンB6 が消費されるから、肉をたくさん食べる美食家も B6 不足になりやすくなります。
ビリドキシン と活性型 B6
ビタミンB6 には2 つの形があります。ビリドキシン塩酸塩(ビリドキシンと略記) とビリドキサールリン酸です。リン酸のくつついた後者が生体で補酵素としてはたらく「活性型跳」です。
それなら、活性型を摂取するほうがよいように思えるのですが、そうはいきません。たとえ活性型B6を摂取しても、リン酸が取り除かれたあとに腸管から吸収されるので、 ビリドキシン を摂るのと変わらないからです。
腸管から吸収された ビリドキシン は肝臓に運ばれ、 ビタミンB2 と マグネシウム の助けを借りて活性型B6になって活躍するので、ビリドキシンを摂取すればよいのです。例外は 肝臓 を患っている人です。 ビリドキシン は肝臓で ビリドキサールリン酸 へ変換されるため、肝硬変などを患っていると、この変換が困難です。このような人には、ビリドキシン を経口摂取しても意味がないため、ビリドキサールリン酸の注射を行います。
心臓を守る
血液中の ホモシステイン 値が少し上昇するだけで、心臓病や脳梗塞が発生しやすくなることが明らかになっています。摂取した タンパク質 を消化すると、 メチオニン をはじめ、さまざまなアミノ酸ができてくるのですが、 ホモシステイン はメチオニンの代謝によってできてくるのです。
健康な人は、この有害なホモシステインを2 つの方法で分解します。1つめは、 ホモシステイン を 葉酸 と ビタミンB12 の助けを借りて メチオニン にもどします。もう1つは、 ホモシステイン を ビタミンB6 の助けを借りて システイン に変換します。
したがって、血液中のホモシステイン値は、葉酸、B12、B6といった3 つのビタミンによってコントロールされています。
ビタミンB6 は心臓病を防ぐことが確認されています。ハーバード大学のリム教授は8 万人の女性を対象に ビタミンB6 の摂取量と心臓病の関係を調査した結果を「米国医学会」誌に発表しました。それによると、ビタミンB6を1日平均 4 .6 mg 摂取する女性は、1日平均1.1 mg しか摂取しない女性にくらべて心臓病の雁患率が 67 % に減少していました。もう1つの大規模研究でも、血液中の ビタミンB6 レベルが低いほど、心臓病の発生リスクが高まることが確認されています。