薬を使わない食事療法(病気・症状別)

血管 を守る 赤ワイン の レスベラトール

ブドウに含まれる レスベラトロール はよく「不老長寿」「血圧を下げる」などと宣伝されています。

主成分
レスベラトロール
効能
心臓病や脳梗塞を防ぐ
副作用
なし
注意
ワルファリンやアスピリンとの併用は避ける

フレンチパラドックスを解く大事なポイント

レスベラトロール は、ベンゼン環が2 個つながったスチルベン系の ポリフェノール で、女性ホルモンのエストロゲンに構造も性質も似ているため ファイトエストロゲン ともいいます。
レスベラトロール は、植物がストレスや傷を負う、病原体に襲われる、紫外線に当たるなどピンチのときに、自衛のためにつくり出す物質です。

レスベラトロール

レスベラトロール それ自体は脂肪によく溶けるが、水には溶けにくい性質です。 レスベラトロール は1992年に赤ワインから発見され、脚光を浴びるようになりました。この物質こそ、フレンチパラドックス( フランス人の矛盾)を解くカギなのかもしれません、そんな期待が高まりました。

フレンチパラドックス とは、フランス人は、フォアグラなど脂肪分の多い食物を食べたり、タバコを吸っても、イギリス人やアメリカ人よりも心臓病が少ないという事実です。

ひょっとして、フランス人が愛飲するワインに心臓病を防ぐ秘密が隠されているのではと注目され続けてきました。その秘密を担うのは、 レスベラトロール なのではと期待されてきました。

1992〜1994年に発表されたWHO (世界保健機関) の調査によると、男性10万人当たりの心臓病による死亡率は、ドイツ人4 5 2 人、イギリス人4 1 7 人、アメリカ人3 9 9 人、ギリシア人3 7 8 人、日本人2 33 人、フランス人254人でした。

もともとコレステロール値が低い日本人は別として、フランス人はコレステロール値が高くても、アメリカ人やイギリス人にくらべて心臓病になりにくいのです。

フランス人は日本人と同じくらい平均寿命が長いのは、心臓が守られているからであるとわかります。これまで フレンチパラドックス は、 ワイン に含まれる抗酸化物質のおかげと説明されきましたが、今では、 レスベラトロール の 効果 であるという説が最有力となっています。

血管の病気を防ぐ

心臓病(心筋梗塞)と脳梗塞は血管の病気です。どちらも脂肪の塊が動脈のなかで破裂する瞬間にできる血栓が、血管を詰まらせることで発症します。血栓はこうしてできます。血液中に悪玉コレステロールと呼ばれるLDL(低密度リポタンパク質) が増えると、その一部が血管の内壁を形づくる内皮細胞のすきまをくぐり抜けて血管壁に入っていきます。

このコレステロールが、内皮細胞に存在する活性酸素によって酸化されます。こうしてできた酸化コレステロールが血管壁に蓄積すると、異物とみなした免疫系のマクロファージがどんどん食べます。

脂肪太りのマ クロファージ は泡状に見えるため、 泡沫細胞 と呼ばれています。 泡沫細胞 が巨大化したものを プラーク といいます。この プラーク が破裂し、血管のなかに放り出されます。これが血栓です。

もし、この血栓が大きいなら、心臓への血液の流れがとどこおったり、止まってしまいます。血液が止まった先にある細胞は、 酸欠状態 になり、長引けば 壊死 してしまいます。これが心臓で起きるのが 心筋梗塞 です。もし同じことが脳で発生すれば、 脳梗塞 です。

おわかりのように、心筋梗塞と脳梗塞は発生する箇所が 心臓 か、 脳 かで異なるだけです。どちらも血管に発生する血栓が原因です。 レスベラトロール は、いくつもの手投で血管を守ります。

まず、活性酸素を分解することで、悪玉コレステロール(LDL) の酸化を抑えます。血小板の凝集を妨げることで、血液凝固を防ぎます。

それから、いちばん大事なのが、 女性ホルモン様 の効果で、内皮細胞から一酸化窒素を放出し、血管を拡張させることです。女性ホルモンが受容体にドッキングすると、一酸化窒素をつくる酵素の遺伝子がはたらき、血管内皮から一酸化窒素が放出されます。

こうして血管が広がり、血液の流れがよくなります。そうなると血管内部にコレステロールが蓄積せず、 血栓 も生じにくくなります。女性の肌がすべすべなのは、血液の流れをよくする女性ホルモンのおかげです。

ところが、更年期になると 女性ホルモン が少なくなるので、血圧が上がり、脳梗塞も増えてきます。それを防ぐために、毎日1〜2杯

 

レスベラトロール の働き

の 赤ワイン が勧められています。 赤ワイン を飲まない人には、 レスベラトロール の サプ
リ での摂取が合理的です。

ガンにも

まだ細胞レベルでの実験結果ですが、 レスベラトロール が、 乳がん 、 前立腺がん 、 胃がん 、 直腸がん 、 すい臓がん 、 甲状腺がん などヒトに発生する多種類の がん細胞 の増殖を抑えることが確認されています。

発がん性物質 の投与によって がん を発生させた動物に、 レスベラトロール を エサ に混ぜて与えると、 食道がん 、 大腸がん 、 乳がん の増殖が止まりました。

 

けれど、経口投与では、 タバコ の 喫煙 で生じる 発がん物質 によって引き起こされた動物の 肺がん の増殖を抑制することはできませんでした。ヒトの がん に対する レスベラトロール の 効果 を試す治験は、まだ行われていません。

多くの研究者は、 レスベラトロール による がん予防 は「期待薄」と予測しています。 がん を予防するには、細胞 レベルでレスベラトロール が高い濃度に達しなければなりません。だが、この物質は人体に入っても迅速に分解されてしまうので、細胞で高濃度に達するのは無理と推察されるからです。

ヒトでの長寿効果は不明

摂取カロリーを制限すると寿命が延びることが、多くの生物種で知られています。カロリー制限をすると、酵母は「寿命延長因子(sir2)」というタンパク質をつくって長生きします。

そして、 レスベラトロール を酵母に与えると、カロリー制限をしなくとも70%も寿命が延びます。

同じしくみから、 線虫 や ショウジョウバエ でも レスベラトロール の長寿効果が確認されています。しかし、より高等な動物にも長寿効果があるかどうかは不明です。

たしかに、 レスベラトロール は試験管レベルでヒトの寿命延長因子のはたらきを高めましたが、それが本当にヒトの寿命を延長するかどうかまでは、証明されていません。

副作用はないが併用は避ける

レスベラトロール のヒトにおける毒性は知られていません。体重1 kg 当たり 300 mgの レスベラトロール をネズミに4 週間にわたって経口投与しましたが、副作用は見つかりませんでした。

妊娠や授乳期における レスベラトロール を含んだ サプリ の安全性については、データがありません。だが、妊娠や授乳期におけるアルコール摂取の安全性が確認されていないのと同じように、妊娠した女性は 赤ワイン など レスベラトロール の摂取を控えるべきです。 乳がん 、 卵巣がん 、 子宮がん など、 エストロゲン で悪化する可能性の高いがんにかかったことのある女性は、 レスベラトロール のサプリを摂取しないほうがよいでしょう。 レスベラトロール は、血小板の凝集を妨げます。このため、 レスベラトロール を大量に摂取すると、ワーファリンなどの抗血栓剤、 アスピリン などの非ステロイド性抗炎症剤を服用したときに、出血する危険性があるのです。

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