暇な生活を送っている人に起こりやすい

更年期障害は男女問わずににおこるのですが、とくに女性の方が更年期障害を訴えやすいのが特徴です。その理由としては、次の点が考えられます。

ひとつには、閉経という特有な現象がおこること、もうひとつは、些細な障害にも心をふり向ける時間的余裕があることです。
毎月規則正しく訪れていた月経が乱れはじめ、出血期間や周期が長くなったり短くなったりする。そんな状態を1~3年経過した後、閉経という時期を迎えます。このことで、「私はもう女ではなくなったのだ」という感慨をもつ傾向がある。ですが、閉経したということは、母となり得る機能が完全にストップしたということだけで、別段、女性でなくなるわけではないのです。
仮に、母性であり得ることが女性であることの最大の資格であるという、生物学的論理を受け入れたとしても、それほど落胆するには及びません。

われわれは、生物学的存在としてのヒトであると同時に、文化的存在としての人間として生きているのです。閉経前か後かなどに関係なしに、生き方しだいで、もちろん大いに存在価値をもち得るのです。
どちらかといえば、高齢者においては、男性より女性のほうが元気がよいのです。

生命力が強く、順応性が高いからです。ただし、閉経が、何らかの障害と結びついた場合が問題になります。

次に、暇と不定愁訴との関係です。人間は有無をいわずやらなければならないことがあるときは、体に起きた些細な変調などにいちいち気をとられていられないものです。家事などは、やるべきことはいろいろあり、それなりに大変だが、長い経験で段どりよくできるし、自分の考えひとつで手抜きもできます。

というわけで、女性は自分の心や体の状態をじっくりみつめる時間があるのです。必然的に、男性より、欲求不満と微妙にからまり合った不定愁訴が生まれやすいと言えるでしょう。

更年期障害のからくり

たいていの女性は、初潮、結婚、妊娠、出産…とホルモン分泌の関門をくぐり抜けていきます。閉経もその関門のひとつで、この時期のみ、とくに障害がおこりやすいということはあり得ないのです。更年期障害がおこるのは、もっと別のところに根本原因があるはずです。
生理機能的にみると、更年期障害の直接的原因として次の3点が挙げられます。

  1. 性ホルモンの分泌不足
  2. 自律神経失調
  3. 精神的ストレスの影響

卵巣からは、卵胞ホルモン、黄体ホルモンの2種のホルモンが分泌されており、女性らしさを生みだしたり、女性特有の機能を維持したりしています。

卵巣機能が年齢とともに低下してくることによって、これらのホルモンの分泌も減少します。このこと自体は自然の変化で、遅かれ早かれ、だれにでもおこることです。

ところが、卵巣機能の低下が急激におこると、体のいろいろな部位にあって互いに関連をもちながら働いている内分泌機能全体が混乱してしまうのです。もちろん、逆に、別の内分泌腺の機能低下がもとで内分泌機能の混乱がおき、それがもとになって、女性ホルモンの分泌が急激に減少することもあるのです。いずれにしても、内分泌機能の混乱がおこると、不安感が強くなったり、熱っぼい感じが抜けなかったりします。自律神経は、血管や内臓に分布している神経。

交感神経と副交感神経という相反する作用をもった2種の神経が、互いにバランスを保ちながら、それぞれの器官組織の機能を、そのときどきに必要な状態に保っています。

たとえば、胃腸においては、眠っている時は、その副交感神経が優位になって、機能旺盛になり、体成分の生合成が盛んにおこなわれます。
逆に、たとえば事業などで不渡手形をつかまされた時などには、悠長に食物のとりこみなどやっていられないから、交感神経が優位になって、胃液の分泌は非常に悪くなります。

この自律神経の機能が失調すると、いろいろな障害があらわれる。とくに中年以上になると、血行不順や動脈硬化などと重なりやすいため、のぼせ、冷え、頭痛、肩こり、不眠などの症状をおこしやすいのです。
また、この時期に精神的ストレスがおこりやすいのは、体全体が衰えてくる時期であり、それだけ抵抗力が弱っているせいです。

やたらにひがみっぼくなったり、体の変調を必要以上に訴えたりするようになる。イライラやヒステリーなどもおこりやすくなります。

子宮筋腫の手術は後にダメージが残りやすい

更年期障害のひとつに数えてもよさそうなのものに、子宮筋腫があります。というのは、思春期以前および更年期以降の発生が、まれだからです。

筋腫は通常、大きさがまちまちの球状の腫瘍として発育します。腫瘍は一個の時もあり、数個あるいは数十個の時もあります。悪性のものは「子宮肉腫」、良性のものは「子宮筋腫」といいます。筋腫は、はじめは子宮壁内に発生するが、その後の発育方向は、

  1. 子宮外面に向かって発育するもの
  2. 子宮壁内にとどまるもの
  3. 子宮腔に向かって発育するものの

の3タイプに分かれます。

子宮筋腫に特有の初期症状はあまりなく、軽度のうちは下腹部に圧迫感を感じるくらいで無症状のことがほとんどです。ところが、月経過多、不正出血が長びくことによってはじめて異常に気づき、放っておくと出血量が多くなって貧血になり、顔面蒼白となります。
貧血症で病院を訪れて筋腫が発見される例も、多数あります。

筋腫の発育が進むと、胃の不快感(ゲツプ)や排尿・排便障害などが出やすい。病院で筋腫が発見されると、「そんなに恐ろしい病気ではありませんよ。もうお子さんもいらっしやることだし、手術で早く治したほうがいいですよ」といわれることが多いのですが、手術のダメージにはかなり大きいものがあります。むろん、症状が極度に進行して、体の代謝が著しく鈍ったり、解毒力が極度に低下してしまって、体の機能を大きく損なうような段階に立ち至った場合には、万やむを得ず応急的な対症療法をおこなわなければならないのですが、しかし、これとてあくまでも必要悪としての一時的な処置であることを忘れてはなりません。
このへんの事情を勘違いして、すぐに現代医学の手術療法で即決しようとすると、後で大きなマイナスを背負うことになるでしょう。

脳・目・耳・皮膚などの衰えに積極的に取りたい食品

以上のように、更年期障害を大きくみると、「物質代謝の不均衡」と「生理機能全体の低下」によってひきおこされているといえるのです。
障害の実態はここにあるのであり、閉経ということ自体に問題があるわけではない。しかし、時期がくれば治るといって放置しておいてよいものではないのです。
物質代謝の不均衡や生理機能の低下は、食物のとり方が不適当な時におこる状態です。間違った食生活による障害は、年をとるほどあらわれやすくなるから、食物のとり方には、いっそう気を配ることが必要です。

その意味で、いろいろな健康食品をとることが必要です。だが、それだけでは不十分。健康状態を決定する最大の要因は、食生活のあり方で、健康食品の効き目も違ってくるのです。白米や肉、化学調味料などを常食する白米・肉食の食生活をしていては、「元の木阿弥」です。

牛乳、卵、白砂糖、もくあみの木阿弥」である。玄米・菜食に切り替えることが大切です。とくに主食に玄米をとることが重要です。玄米は、圧力釜を使えば、十分に軟らかく炊けるから、消化器に負担をかけすぎる心配もなく、各種の有効成分を補給でます。

豊富に含まれるビタミンB群は、自律神経機能の正常化にきわめて有効です。ビタミンEは、性ホルモンの分泌を促し、血行を滑らかにします。その他、リノール酸、パントテン酸など多彩な成分が、神経・ホルモンなどの調節機能を正常化します。

副食には、季節の野菜・海藻・小魚介類をとる。とくに、根菜類と海藻を積極的にとるようにします。根菜類は、冷えを防ぎます。海藻類には、カルシウムやヨード、リン、鉄など各種のミネラルが含まれており、脳や目、耳、皮膚などの衰えを防止する効果が著しいのです。

更年期障害の治療のポイント
  1. 精神の安定を保つ努力をする。人間や社会について洞察力を高めるようにして、無用なストレスに翻弄されないようにすること。
  2. 過食・偏食をやめる。料理は計画的につくり、残り物を食べるような状況をつくらない。いつも同じようなものを食べると代謝もかたよるから、バラエティーに富んだ献立を工夫する。
  3. 玄米・菜食に切り替える。根治の決め手である。玄米を主食にし、野菜・海藻・小魚介類を副食とする。それに体質に合った健康食品と薬草茶をプラスするのが、基本原則である。
  4. 根菜類を積極的にとる。温室野菜を常食していると、体が冷えやすく、自律神経のアンバランスもおきやすい
  5. 海藻を毎食とる。海藻は血液、神経、ホルモンの調節系の働きを健全にする。豊富なミネラルが、脳や感覚器の衰えを防止する。
薬効食品と自然療法
シャクヤク
根を5グラム煎服する。
トウキ
根を10グラム煎じて飲む。
アズキ
便通をよくし、浄血作用が大。味つけは自然塩や黒砂糖を用いる。
ゴマ
リノール酸、カルシウムが豊富で、脳神経を健全に保ち、老化を防ぐ。
漢方薬で更年期障害の症状を軽減するには

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