病気の原因と症状
甲状腺(こうじょうせん)とは、頸部の前側ののどぼとけのすぐ下にある内分泌腺です。羽をひろげた蝶のようなかたちをしていて、正常だと甲状腺は柔らかいので手で触ってもわかりませんが、異常があって腫れると、外から首を見ただけで腫れているのがわかるようになります。
甲状腺のはたらきは、体の新陳代謝を調節するための甲状腺ホルモンをつくり、分泌することです。甲状腺ホルモンには、新陳代謝を促進して私たちが活動するために必要なエネルギーをつくったり、脳や内臓を活性化したりと、大切なはたらきがあります。ですが、この甲状腺ホルモンの量は、多すぎても良くないし、逆に少なすぎても良くありません。そこで、甲状腺ホルモンを調節するためには脳から指令が出され、一定量を保つために甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出されるのです。
甲状腺の病気には、次のようなものがあります。
- 甲状腺機能亢進症
- 甲状腺機能低下症
- 甲状腺ガン
甲状腺ホルモンが多い状態
甲状腺ホルモンが少ない状態
甲状腺に良性または悪性の腫瘍ができた状態
甲状腺機能亢進症は、別名「バセドウ病」ともいわれます。一方の甲状腺機能低下症は、別名「橋本病」ともいわれます。また、甲状腺ガンの種類には、乳頭ガン、濾胞(ろほう)ガン、髄様(ずいよう)ガン、未分化ガン、悪性リンパ腫などがあります。
甲状腺ホルモンの分泌のバランスが崩れると、さまざまな症状があらわれてきます。甲状腺ホルモンの量が多くなると、新陳代謝が活発になりすぎてたくさん汗をかいたり、食欲旺盛でも体重が減少します。また、疲れやすく、一日中動悸が続いたりもします。逆に甲状腺ホルモンの量が少なくなると、新陳代謝が悪くなり、寒気がしたり、皮膚が乾燥したり、食欲がなくでも体重が増えてきます。また、体がだるく無気力になって、いつも眠気を感じるようになります。
甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症)の食事療法について
甲状腺機能亢進症では、代謝が亢進しているために消費するエネルギーが大きく、体内に蓄えられている脂肪やタンパク質の分解が進みます。ですから、必要なビタミンやミネラルの量も普段より多めになります。食事は代謝の変化に対応できるようにします。
消費量の増加に合わせエネルギーを補給する
代謝が亢進するので基礎代謝が進み、消費されるエネルギーも大きくなるので、その分多めに食べなければなりません。発症当初は異常に食欲があって、たくさん食べても体重が増えない状態です。快方に向かってくると、食欲も体重も次第に戻ってきます。
栄養をバランス良くじゅうぶん補給する
亢進しているエネルギーの代謝に見合うだけのビタミン、ミネラルを摂るようにします。タンパク質の分解も亢進しているので、さまざまな食品をまんべんなく摂るようにし、特に、乳製品と緑黄色野菜を積極的に摂ります。
ヨウ素(ヨード)を控える
甲状腺から分泌されるホルモンの主原料になっているのはヨウ素(ヨード)です。ヨウ素が多く含まれている海藻類の摂取を控え、ホルモンの分泌を抑えます。
調理のコツ
食事の量を増やしますが、バランス良く組み合わせたメニューにします。
わかめやひじき、昆布、海苔などの海藻類は、ヨウ素(ヨード)が多く含まれているので、できるだけ避けましょう。ほうれん草、小松菜、にんじんなどの緑黄色野菜は、お浸しや炒めものにして、不足しないように摂取しましょう。